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ノトハハソの炭やきプロセス

​1.クヌギの植林・育林

能登の自然の植生では、茶道(6〜10年)に適したクヌギの群生地が無いので、自ら植林しています。日当たりが良く搬出しやすいよう、緩やかな傾斜があってひらけた場所を選んで植林。周辺の草刈り、余分な枝を払うなど手間ひまをかけて育てます。炭やきに適した大きさに育つまでに要する期間は約8年。能登の自然環境で育つクヌギは年輪が狭く密度が高い原木になります。

植林

2.伐採

植林後8年経ったクヌギは、高さは胸の高さ、直径10cm程度になります。

木が活動を休止する11月から、活動を再開する3月までの間に伐採します(雪の降る中でも伐採します)。

クヌギ伐採

3.玉切り

伐採した原木を窯に入る長さに切り揃えます。できるだけまっすぐになるよう、曲がりが強いところや木の股の部分を取り除きます。

クヌギ玉切り

4.搬出

クヌギは他の木と比べてかなり比重が重い木です。玉切りした原木をまず運搬車に乗せて森から移動、さらにトラックに積み込んで搬出します。

5.窯詰め

奥には細い木、手前に太い木が来るように詰めていきます。上部の隙間には枝を詰めます。窯内の隙間を少なくすること、本焚き時の着火剤として、また炭材の上部を保護する役割があります。

6.乾燥炊き

火を入れて、ゆっくりと温度を上げていきます。焼きむらを無くすため、水分量や温度が均一になるよう、時間をかけてじっくり温めます。薪には炭になる部分以外の木を無駄なく活用。

7.本炊き

薪の量を増やし一気に窯の温度を上げていきます。一定の温度に上がり炭材の熱分解が始まったと判断したら、薪を入れるのを止めて吸気量と排気量を調整。自然に炭化が進むことで、炭素純度が上がっていきます(熱分解で木の中の有機物が気体と液体に分解することで、残された炭素同士が再結合して炭化が進み、炭素純度が上がります)。

8.冷却

炭化がおおむね終わってから、排煙口から出る煙の温度が上がるのを待って、練らし加減を見極め、窯を密閉し消火します。火が鎮まって冷却されていくのを見守ります。

9.選別

用途別に適切な長さに切り揃えて、選別し、出荷。厳しい選別が、ノトハハソの茶道炭の品質を支えています。

ノトハハソの炭やき窯

ノトハハソでは、もともとは土と石でできた伝統的な炭窯を使用していましたが、たび重なる地震や大雨による被害を受け、地震の揺れに強く移動も可能な金属窯を開発(石川県・ヨシオ工業との連携)、導入しています(2025)。
2026年11月までに計3基、2029年までには計4基になるよう設置を予定しています。金属窯を使用して、これまでの伝統的な炭窯と同等の品質の炭を焼くための試行が続いています。

​ノトハハソの植育林

能登の自然の植生では、茶道用炭(6〜10年)に適したクヌギの群生地が無いことから、ノトハハソでは自ら植林を行っています。
長野県の育苗組合から茶道用炭に適したクヌギ苗を分けていただき、2004年から植林を開始。ボランティア皆様の支援を得て、現在も続けています。現在(2025年現在)までに植林されたクヌギは約7000本(自社のみ ※地域内での自主的な植林は別途あり)。
植林してから8年で、炭にできる太さ(胸の高さで直径10cm)まで育ち、伐採後は切り株から「ひこばえ」と言われる若芽が生え出て、また木に育っていきます。
クヌギの木を植林し炭として利用し続けることで、この持続可能なサイクルを回し、里山を保全、森の生態系・生物多様性を維持していきます。周辺の耕作放棄地などにもクヌギ植林が拡がっています。

※ノトハハソの「柞の森」は、2023年に環境省「自然共生サイト」として認定されています。自然共生サイトとは、環境省が、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する世界目標「30by30」の実現に向け、2023年度から企業の森や里山、都市の緑地など「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を認定しているものです)

木炭、茶道用炭について

木炭とは

原木を、酸素が少ないところで高温加熱し蒸し焼きにすると、酸素、水素、不純物などが揮発、純度の高い炭素だけが残ります(炭化)。火力が強く火持ちが良く煙も火花も出にくい「黒炭」(クヌギ炭)、炭素の純度がより高く燃焼時間が長い「白炭」(備長炭)の他、おがくずを固めて作ったものを炭化して作る「オガ炭」などの種類があります(ノトハハソの炭は黒炭です)。日本刀の鍛造に利用されているのは赤松の黒炭。森林の多い日本では、古来より炭の利用が始まっており、茶道など日本の伝統文化とも永く深い関わりがあります(後述する茶道炭の項参照)。また、木炭には目に見えない穴が無数に空いており(多孔質)、燃料としてだけでなく、調湿・脱臭・土壌改良にも利用されています。

木炭の市場について

木炭は、家庭用の燃料としては使用する機会が少なくなっているが、飲食店、茶道等では根強い需要があるほか、電力なしで使用できる等の利点から災害時の燃料としても活用されている。また、多孔質の木炭について、浄水施設のろ過材や消臭剤としての利用も進められている。さらに、近年、土壌改良材として農地に施用する「バイオ炭」が注目されている。バイオ炭の農地施用は、難分解性の炭素を土壌に貯留する効果があり、気候変動緩和効果も期待できることから、J-クレジット制度において、温室効果ガスの排出削減活動としてクレジット化が可能となっている。
木炭(黒炭、白炭、粉炭、竹炭及びオガ炭)の国内生産量は、長期的に減少傾向にあり、令和4(2022)年は前年とほぼ同量の1.7万トンとなっている。国産木炭は、和食文化の拡がりに加え、その品質の高さによる海外の需要が期待されることから、海外市場への参入を目指す動きもみられる。輸出の拡大は、需要の維持・拡大を通じて、伝統的な木炭生産技術の継承や大径化が進む薪炭林の若返りにもつながることが期待される

(令和5年林野庁森林林業白書より抜粋)


昨今、海外産の木炭の流入による炭価格の下落、効率化できない過酷な作業などによる人手不足で、炭やきを廃業する人も多くなっています。ノトハハソでは、高品質・高価格の炭市場を切り拓き、専業の生業としても持続可能な炭づくりを目指しています。

茶道用炭について

お茶の湯を沸かす茶道用の炭は、茶会には欠かせないもの。クヌギの木を原木とする黒炭は、菊の花のような見た目から「菊炭」とも言われています。炭の中でも、特に高い品質が求められ、世界最高レベルと言われています。
炭手前はお湯を沸かすために、炭を炉や風炉についだりかきたてたりして火を適切に調整する作法のこと。炭手前用の炭は「道具炭」と言われ、用途によって多くの種類があり、そのサイズや形状が定められています(流派によっても違いがあります)。
茶会では11月~4月は「炉」を用います。炉用の炭は後述する風炉用の炭よりサイズが大きく、炭の数も多くなります。5月~10月の間は「風炉」が使われます。風炉用の炭は炉用よりサイズが小さくなります。
茶道用の炭の主な産地は、池田炭(大阪)、佐倉炭(千葉・栃木)、伊予炭(愛媛)、松坂炭(三重)など。ノトハハソは、「伝統(=茶道)を支える伝統(=炭)」として、奥能登を茶道用炭の産地化していくことを目指しています。

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